【鉄道】ワルシャワ-キエフ 直通列車キエフ・エクスプレス(Kiev Express)乗車記

19年1月21日~22日、ポーランドワルシャワからウクライナキエフまで、直通の寝台列車で移動した。

ワルシャワを17:09に出発し、翌朝11:05(ポーランドウクライナでは1時間の時差有り)にキエフに到着する。

この列車の切符もポーランド国鉄のWebで購入した。

 

早めにCentralna駅に着くと、1時間以上遅れてフランスのニースからモスクワへ向かう

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ニース発モスクワ行きの列車。清潔感の有る個室寝台車だった。

列車がやって来た。

毎週日曜の朝9:30にニースを出て、火曜日の朝11:45にモスクワに着く列車だ。

キエフ行きもこんな感じのスキっとした列車だといいなと思いながら待っていた。

 

やがて写真の様な編成案内が現れた。

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Warszawa Centralna駅でのKiev Expressの編成案内

12両編成でキエフ行きは後4両で前8両はウクライナとの国境近くのChełm止りだ。

Chełm行きのローカル列車とキエフ行きを兼ねており、21:49のChełm着までは頻繁に停車する一方、21:53にChełmを出てからは、翌朝11:05のKiev Pasazhyrskyi (Київ-Пасажирський)着迄の約12時間はどこにも停車しないという、日本人的感覚だと少し違和感の有るダイヤになっている。

 

16:55に時間通りキエフ・エクスプレスはやって来た。

ポーランドの車両であるChełm行きとウクライナの車両のKiev行きは、デザインがはっきり異なっており、まさに2種類の列車がたまたま途中まで一緒に走るだけという感じだ。

 

キエフ行き4両にはそれぞれ車掌が入り口で控えており、自分の号車とおぼしき車両の車掌へ切符を見せた。すると彼は隣の車両の車掌を呼びしばらく何か話していたが、やがてその隣の車掌が「こっちだ」という風に最後尾の車両へ私を連れて行った。

 

最後尾車両の車掌も「着いてこい」という風に通路を進んで行き、やがて端から2つ目のコンパートメントを示し、入れとの仕草だ。

ここまでの短い時間に何度か英語での意思疎通の可能性を探ったが、全く絶望的である事を悟った。

 

私が示されたコンパートメントには既にウクライナ人かポーランド人か分からない中年男性が居た。私の切符は「一人用コンバートメント」で予約したつもりだったのだが、コミュニケーションの手段は無く、しばらく様子を見る事にした。

 

コンパートメントは、かつて日本を走っていたA個室(オロネ25)のベッド幅を広げ、3段式にしたような感じ。切符を買う時に、一人用/二人用/三人用の選択肢が有ったが、どうやらそれぞれで異なる車両を使うのでは無く、単にそのコンパートメントに何人入れるかの違いらしい。車両は恐らくソ連時代の古いものを整備しながら使い続けていると思われた。

 

やがて車掌がやってきて同室の人と何か話し、暫くして二人共出て行った。どうやらコンバートの準備ができていなかったらしい。

この後もちょこちょこと車掌がやって来たが、ノック無しでいきなりドアを開けるのには閉口した。

 

ワルシャワを出た列車は南東へ進み、Lublinで進行方向を変え、定刻にChełmに着いた。

Chełmを出て直ぐに、例によってノック無しでドアが開き、身振りで開けたままにしておけと伝えた。コンバートメントの中はある程度暖かったが通路は寒く、温度が一気に下がった。

 

しばらくするとパスポートの読み取り装置を首から下げた係官がやって来た。初めて汽車のマークが入ったシェンゲン協定からの出国スタンプを見た。

それに続いてカーキ色の軍服の様な制服を着たウクライナの係官が来て、申告物が無いか聞く。この時は流石に英語で聞いてきた。

その後、またしばらくして今度はウクライナの係官が来てパスポートを持って行った。

ずっとドアを開けたままなので寒い。

閉めようかと思い、通路に出て他の様子を伺うと、どこも開けたままにしており諦めた。

 

列車はゆっくりと進み国境らしき地点を越え、スイッチバックを繰り返して工場の様な所へ入って停止した。

ポーランド以西とウクライナベラルーシ軌間が異なるので、ここで台車を交換する。それから一時間半程かなりの音を立てて作業は進んだ。寒くて眠いので座ったままで掛布団にくるまりウトウトしていた。

 

1時前に作業は完了し、ゆっくり列車は進み始めた。

動き始めて数分後、さっきパスポートを持って行った同じ係官がやって来てパスポートを返した。確認すると一番最後のページにスタンプが押されていた。

やっと眠れると思い、ドアを閉めてチェーンロックを掛けた。

 

目を覚まして腕時計を見ると7時過ぎだった。列車は快調に走っている。

あと4時間か、と思った時に時差に気付いた。もう8時過ぎだ!!

という事はかなりキエフに近づいてるはず、と思い位置情報で調べると、事前に予想していた経路より随分南側を東に向かって走っていたので驚いた。

 

列車は驚く程きっちり定刻にキエフに着いた。

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キエフ旅客駅(Kiev-Pasazhyrskyi/Київ-Пасажирський)に到着したKiev Express

低いホームに降り立つと、石炭の匂いがする。まるで蒸気機関車が走っているかの様で懐かしい気がした。流石に蒸気機関車は走っていないだろうから、近くに石炭火力発電所か何か有るのだろう。

 

30年前にブダペストからウィーンへ列車で移動し、ウィーン駅に着いた時はタイムマシンで未来にやって来たらこう思うだろうという気持ちにさせられたが、今回は逆だ。

さぁ、キエフの探索に出掛けよう。